
『路上』 F10号
人生の旅の途次に・・・・
美術評論家 中野 中
この稿を書いている今、平松さんはひとりイタリアの空の下を歩い
ている。見知らぬ木々を仰ぎ、名も知れぬ川をいくつも渡り、街に
吹きわたる風に耳を傾ける。白由を満喫し、不自由にもまれながら。
旅は、過ぎ去った人々を思い、新たな出会いに心ふるわせ、小さな
記憶をつくりつつ、はるかな記憶をたぐり寄せる。
平松さんの何度目かの個展が開かれる。たたずむ人に、くぐもる
空に、平松さんの心がのぞかれる。描くことが生きることであり、
人生の旅ともなって、そこに自身が投影される。いや、白身の魂の
遍歴が絵画となって立ち上がってくるのだ。人生の旅の途次にどん
な世界を垣間見せてくれるのだろう。
どこか懐かしくて、しかも新たな未知が広がっているに違いない。